エコキュートの仕組みは?メリット・デメリットも詳しく解説

「エコキュートってどんな仕組み?」

「エコキュートを導入するメリットは?」

エコキュートは省エネ性能で家計にもやさしい給湯器ですが、どんな仕組みなのかわからない方も少なくないでしょう。

そこで本記事では、エコキュートの仕組みやガス給湯器との違い、導入するメリットやデメリットを詳しく解説します。

住宅の購入やリフォームをする方は、エコキュートを導入すると補助金がもらえる可能性があるためお得にはじめるチャンスです。

ガス給湯器とエコキュートで迷って決めかねている方は、ぜひ最後までお読みください。

エコキュートの仕組み

エコキュートは、電気代が安い夜間にまとめて沸かしたお湯をタンクに貯湯して使う給湯設備です。

夜間に沸かしたお湯は、水で温度調節してからキッチンや洗面所などの蛇口に運ばれます。

エコキュートは基本的に、夜間にあらかじめ沸かしておいたお湯を翌日の昼間に使うため、都度沸かすガス給湯器や電気温水器とはまったく異なります。

空気中の熱でお湯を沸かす

エコキュートは、空気からポンプで熱をくみ上げる構造から「ヒートポンプ式」と呼ばれています。

ヒートポンプユニットの仕組みは、外から集めた空気中の熱を「冷媒」という二酸化炭素の気体で熱交換器まで運びます。

そして、圧縮され高温になった冷媒が、ヒートポンプ内の水側熱交換器で水に熱を伝えてお湯を作り出します。

ガス給湯器は、ガスを燃焼させて加熱した熱交換器(パイプ)を通過した水が、お湯に変わる仕組みです。

水道の蛇口をひねるとガス給湯器が稼働するため、「瞬間式」と呼ばれています。

また、電気温水器は電気ヒーターで発する熱エネルギーで水を直接加熱する仕組みです。

このように、ガスや電気の熱で直接加熱するタイプの給湯器と、空気中の熱を利用して水を加熱するエコキュートではお湯を沸かす仕組みが異なります。

空気中の熱をヒートポンプで圧縮し、少ない電力でお湯を作るエコキュートは、消費電力が従来の1/3で済みます。

電気代が安い夜間の電力を使用してお湯を作るので、給湯にかかる電気代を抑えられるのが魅力です。

環境にやさしく省エネ

エコキュートは、再生可能エネルギーである空気中の熱を使ってお湯を作るため、環境にやさしい給湯機器です。

空気中から熱を集めるのに使用する冷媒(二酸化炭素)は、人工的に製造された二酸化炭素であるフロンと違い、オゾン層の破壊に繋がりません。

冷媒を利用したヒートポンプ式は、二酸化炭素排出量が従来のガス給湯器よりも少ない面からも、地球環境にやさしいといわれています。

また、エコキュートが省エネで優れているのは、エネルギー効率がよい点です。

従来の給湯器は、電気エネルギー1に対して給湯エネルギーも1しか得られませんでした。

一方エコキュートは、電気エネルギー1に対して3以上もの給湯エネルギーが得られます。

少ない消費電力で効率よく貯湯できるため、地球環境にも家計にもやさしい給湯設備といえるでしょう。

エコキュートのメリット

エコキュートを使うメリットを4つ解説します。

  • 光熱費が安くなる
  • 災害時にタンクのお湯が使える
  • 国や自治体から補助金が支給される可能性がある
  • 地球環境にやさしい

経済的なメリットに加えて、災害時に備えられる仕組みもあります。

光熱費が安くなる

まず、消費するのは電力のみでガス代がかかりません。

少ない消費電力で効率よくお湯を沸かすエコキュートは、従来の給湯システムに比べて電気代も抑えることが可能で、月々の光熱費が安くなります。

次に、夜間帯にまとめてお湯を沸かすため、夜間の電気料金が安いプランを契約すればさらに電気代が抑えられます。

お住いの地域の電力会社にもよりますが、エコキュートの毎月のランニングコストは、ガス給湯器の1/3程度に削減できるでしょう。

エコキュートは基本的に、夜に沸かしたお湯を日中に使いますが、昼間にお湯が足りなくなった場合は追加で沸き増しをおこないます。

ただし、日中に沸かすと電気代が高くなってしまうため、湯切れをおこさないよう調整が必要です。

エコキュートを導入したからといって、消費電力の大きい家電を日中に使い過ぎると、かえって電気代が高くなる恐れがあるのでご注意ください。

災害時にタンクのお湯が使える

エコキュートはタンクにお湯を貯めておけるため、非常時にはタンクから取り出したお湯を生活用水として利用できます。

停電時はタンクのお湯がぬるくなってしまいますが、トイレを流す水や炊事洗濯には十分使えるでしょう。

また、電気水道ガスのライフラインのうち、一番復旧が早いのは電気といわれています。

電気が復旧すれば給湯器を稼働できるため、ガス給湯器よりも早くお湯が使えるようになります。

 

災害が多い日本において、備えは必要不可欠です。

エコキュートがあれば生活用水の備蓄がかなうため、震災対策として大きな役割を果たします。

国や自治体から補助金が支給される可能性がある

エコキュートを設置すれば、国や自治体から補助金が交付される可能性があります。

条件に合致すれば、新築住宅に限らず中古住宅の購入やリフォームでも支給対象となるため、補助金を受けられる対象世帯の間口が広いことが特徴です。

支給対象は、新築の分譲住宅や注文住宅の購入、中古の住宅やマンションの購入、既存住宅のリフォーム時にエコキュートを設置するケースです。

基準を満たすエコキュートを設置する場合の補助金と、蓄熱暖房機や電気温水器の撤去時に支給される追加補助金があります。

この施策の背景にあるのは、2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」へ向けた取り組みである「給湯省エネ2024事業」の開始です。

申請可能なのは2023年11月2日~2024年12月31日までに工事申請をおこなった住宅ですが、予算の上限に達すると受付は終了します。

補助金の基本金額は8万円です。

設置するエコキュートの機種によって支給額が異なり、各自治体で条件が変わるため、詳細はご自身でご確認ください。

参考:給湯省エネ2024事業

地球環境にやさしい

エコキュートは、ヒートポンプ技術で空気中の熱を使ってお湯を作るため、環境にやさしい給湯設備です。

従来のガス給湯器は、水を直接温めるために燃料を燃やすとき、地球温暖化の原因になる二酸化炭素を排出します。

一方エコキュートは燃料を燃やさないので、有害な二酸化炭素を発生させずにお湯を沸かすことが可能です。

エアコンや冷蔵庫などの一般的な電化製品が利用する冷媒であるフロンは、人工的に製造された二酸化炭素で、オゾン層を破壊する性質を持つため世界中で使用が規制されています。

エコキュートのヒートポンプ技術で必要な冷媒は、自然界にある物質から熱を集めたり移動させたりするため、オゾン層を破壊しません。

この冷媒は「自然冷媒」と呼ばれており、工場で発生したものを再利用しているので、環境にやさしいといわれています。

また、エコキュートで導入されている給湯用ヒートポンプ技術は、ガス給湯器などの燃焼式給湯器と比べて、約35%の消費エネルギー削減と約50%の二酸化炭素削減効果が考えられます。

二酸化炭素排出量を削減しつつ省エネなエコキュートは、地球環境にも家計にもやさしい設備です。

参考:低炭素化社会づくりに向けたヒートポンプの革新的技術開発と普及促進-産業競争力懇談会(COCN)

エコキュートのデメリット

エコキュートのデメリットを6つご紹介します。

  • 初期費用が高い
  • 設置スペースが必要
  • 水圧が弱い
  • 夜間に動作音がする
  • 湯切れする場合がある
  • 昼間に湯沸かしすると光熱費が高くなる

メリットだけでなく、デメリットも正しく理解しておきましょう。

初期費用が高い

エコキュートは、ガス給湯器や電気温水器に比べると初期費用が高額です。

機種にもよりますが、本体価格10万円程度に加えて設置費用がかかります。

エコキュートの機種には、性能によって大きく分けて以下3つの給湯タイプがあります。

給湯タイプ搭載性能
フルオート湯はり、保温、足し湯、追い焚き、沸き増しなどが自動
オート湯はり、足し湯のみ自動
給湯手動で湯はり

参考:よくある質問-Panasonic公式

なるべく手間を掛けたくない方は、湯はりや足し湯、追い焚きまですべて自動のフルオートタイプをおすすめします。

湯はりや足し湯は自動がいい、フルオートは不要と感じる方はオートタイプを選びましょう。

すべて手動で構わないので本体価格を抑えたい方には、給湯タイプが最適です。

給湯タイプは水栓も手動で開閉する必要があるため、給湯時の栓の閉め忘れに注意が必要です。

搭載機能が多いほど高額になり、機能を限定すれば価格を抑えられます。

求める機能によって利便性と予算を比較検討し、初期費用だけでなく月々のランニングコストも考慮に入れることが重要です。

初期費用が安く済んでも、月々の光熱費がかさむのであれば元が取れません。

導入の初期費用と、月々の支払いを含めたトータルコストで検討してください。

設置スペースが必要

エコキュートは、ヒートポンプユニットと貯湯タンクの2つで構成されており、広い設置スペースと作業スペースが必要になります。

設置に必要なスペースはおよそ「高さ3メートル×幅3メートル×奥行1メートル」ほど。

隣接する障害物との距離が約60センチ必要なので、戸建住宅に設置する場合は、隣家との間に十分なスペースがあるか確認しましょう。

各メーカーから、コンパクトタイプや薄型タイプ、高さが低いものなど、さまざまなタイプが出ているため、以前よりも置く場所を選ばない機種が増えています。

水圧が弱い

エコキュートは、ガス給湯器の1/3程度の水圧です。

貯湯タンク内の圧力に耐えうるように、通常のエコキュートで190kPa程度まで減圧されています。

水道水の水圧が500KPaのため、水圧が強いシャワーなどが好みの方は気になる差でしょう。

パワフル高圧のエコキュートを選べば、給湯圧力は290kPa~360kPa程度まで期待できます。

エコキュートの高圧機種には、高圧タイプとパワフル高圧があり、それぞれ下表の通り水圧が異なるため注意が必要です。

機種水圧特徴
高圧170kPa~190kPa・節電できる・肌への刺激が弱め
パワフル高圧300kPa前後・3階でも使用できる・2ヶ所同時使用も可能・水道代が高くなる

一般的なガス給湯器の場合の水圧が500kPaなので、高圧に切り替えたばかりのときは水圧の弱さが気になるかもしれません。

一方で、高圧タイプのほうが水道代がかからないため、湯切れしにくいメリットがあります。

強い水圧が好みの方や、3階建住宅の3階で水道やシャワーを使用する家庭は、パワフル高圧がおすすめです。

各メーカーから発売されているパワフル高圧機種の違いは下表をご参照ください。

メーカー水圧
パナソニック(ウルトラ高圧)325kPa
コロナ260kPa
三菱290kPa
ダイキン320kPa
日立500kPa

参考:ウルトラ高圧-Panasonic/製品情報サイト-コロナ/ハイパワー給湯-三菱/ダイキンエコキュート-ダイキン/エコキュート-日立

水圧が1番強いメーカーは日立です。

湯はりスピードの調整や節水の機能を備えたメーカーもあるため、迷う場合は水圧以外の機能も含めて検討するのがおすすめです。

夜間に動作音がする

エコキュートは、湯沸しをおこなう夜間に設備から動作音がします。

動作音は各メーカーともにおよそ40dB〜50dB程度といわれています。

環境庁の生活騒音パンフレットによると、40dBは昼間の戸建住宅地や図書館の館内程度です。

一般的にはさほど大きな音ではありませんが、部屋が近い場合や音に敏感な方であれば気になるかもしれません。

湯切れする場合がある

エコキュートは夜間に沸かしたお湯を日中に使うため、使い過ぎると途中で湯切れする可能性があります。

メーカーによっては過去2週間~1週間のお湯の使用量を計算して、最適な湯量を沸かしてくれる機種もあります。

お湯の残量を見ながら、湯切れしそうであれば使用量を調整してください。

シャワー使用中などの湯切れを防ぐために、自動沸き増し機能がついている機種もあります。

この機能がオンになっていると自動で沸き増しするため、不要な場合はオフにしておくといいでしょう。

昼間に湯沸かしすると光熱費が高くなる

使用量を調整しても湯切れしそうな場合は追加で沸き増しすることも可能ですが、日中に沸かすと電気代が割増になるため注意が必要です。

夜間の電気代が安いプランにしていると、日中の電気代がさらに割増となる電力会社も多いので、頻繁に沸き増しをおこなうと電気代がかさみます。

エコキュートで湯沸かしが安いからと油断して無計画に使い過ぎてしまうと、昼間の沸き増し量が増え、かえって電気代が高額になる可能性があります。

季節によってお湯の設定温度を変える、シャワーや洗い物の際にお湯を流しっぱなしにしないなど、日ごろから意識しましょう。

エコキュートで節電を考える場合の注意点

以下4点に留意すると、エコキュートで節電したいと考えている方は、より効果を得られます。

  • 最適な料金プランを選ぶ
  • 日中の使用量に気を付ける
  • 追い焚き・高温足し湯・湯はりを使い分ける
  • 太陽光発電との併用を検討する

エコキュートで節電を考える場合の注意点4つを詳しく解説します。

最適な料金プランを選ぶ

エコキュートを導入する際は、夜間の電気代が安い料金プランを選ぶことが重要です。

夜間にまとめてお湯を沸かすエコキュートは、どの時間帯も料金が変わらないプランでは節電効果がありません。

電力会社によっては夜間の料金が安いプランが複数あるため、各家庭のライフスタイルにあった最適な料金プランを選びましょう。

日中の電気使用量に気を付ける

日中の電気使用量に気を付けなければ、エコキュート導入前よりも電気代がかさむ場合があります。

お湯の使用量だけでなく、他の家電の使用にも注意してください。

エアコンや洗濯機・乾燥機など、消費電力が大きな家電を使い過ぎると、エコキュートを導入しても期待していたほど電気代が下がらない可能性があります。

普段からお湯の使用量が多い家庭は、容量が大きな貯湯タンクを選ぶのもひとつの手です。

4人家族の場合のタンク容量の目安は370~460リットルのため、それよりも使用量が多いか少ないかよく検討して決めましょう。

追い焚き・高温足し湯・湯はりを使い分ける

湯はりしてからなるべく間隔を空けずにお風呂に入ったり、湯船にふたをして自動保温を切ったりすると節電に繋がります。

お湯がぬるくなったときに追い焚きや足し湯をしたり、冷めないよう保温したりすると電気代がかさみます。

湯温がかなり下がってしまった場合は、追い焚きではなく高温足し湯をするのがおすすめです。

追い焚きよりも高温足し湯のほうが電気代を抑えられますが、お湯が完全に冷めてしまった場合は湯はりし直すほうが電気代はかかりません。

状況によって、追い焚き・高温足し湯・湯はりを使い分けてください。

太陽光発電との併用を検討する

日中に消費電力の大きい家電を使うことが多い家庭は、太陽光発電との併用を検討しましょう。

日中の電気を太陽光発電でまかない、余った電力は電力会社に売電することも可能です。

昨今では太陽光発電とエコキュートを組み合わせられるメーカーも増えています。

太陽光発電とエコキュートを連携させれば、太陽光発電で発電した電気をエコキュートへ供給できます。

ダイキン、三菱、パナソニック、日立など各種メーカーから、太陽光発電対応のエコキュートが販売されているため、接続工事をおこなえば簡単に太陽光発電との連携が可能です。

まとめ

エコキュートは、夜間電力で沸かしたお湯をタンクに貯めて使うタイプの給湯器です。

空気中の熱を活用してお湯を沸かすため、ガス給湯器の1/3のランニングコストで使えるのが最大の魅力といえます。

また、湯沸かしをする際の二酸化炭素の排出量が少ないため、環境に配慮したい方にもおすすめです。

太陽光発電と連携させてエコキュートを稼働させれば、さらに省エネ・エコに繋がります。

エコキュートは光熱費を抑えられ、災害時にもお湯が使えるメリットがある一方で、初期費用がかかることや、湯切れの心配などのデメリットもあります。

購入後に後悔しないよう、メリット・デメリットを正しく理解してから導入しましょう。